
こんにちは、長井です。
この写真の庭は、私が設計して、石を積んで、植えて、仕上げまで見届けた庭です。
正直に言うと、庭って「完成した瞬間がいちばん綺麗」…とは限りません。
この庭はむしろ、ここから育っていく庭。雨に濡れて石が落ち着き、葉が広がって影が深くなり、季節が回るたびに表情が増えていく。そういう庭を目指してつくりました。
今回は、どうしてこんな形にしたのか、何を大事にしたのかを、職人目線で書いてみます。
飾った言葉より、現場で考えたことをそのままに。
庭って、見た目が綺麗でも、落ち着いて座れない庭が案外多いです。
理由はだいたい同じで、“居場所の輪郭”がないんですよね。
この庭は周りが木で囲まれていて、光がやわらかい。せっかくなら「眺めるだけ」じゃなくて、ここでコーヒー飲んだり、本を開いたり、何もしない時間がちゃんと成り立つ場所にしたかった。
だから最初に決めたのはこれです。
その答えが、写真の曲線の石積みです。
あの石積み、写真だと雰囲気がいい“壁”に見えるかもしれません。
でも私の中では、あれは壁じゃなくて背骨です。
庭の真ん中に、ふわっと丸い部屋をつくる。
石積みの高さは、腰が落ち着くくらい。座っても苦しくないくらい。
そしてぐるっと囲むんだけど、きっちり閉じない。少しだけ開ける。
この「ちょっと開いてる」が大事で、閉じすぎると圧が出るし、開きすぎると落ち着かない。
庭はこういう“ちょうど”の積み重ねです。
あと、石は正直です。
誤魔化すと一発でわかる。積み方が雑だと、線が荒れるし、陰影が汚くなる。
逆に丁寧に積むと、夕方の光で石がちゃんと立ち上がって見える。
この庭は、夕方が一番いい顔します。
石積みの影が柔らかく伸びて、葉っぱの影と混ざって、ぐっと静かになる。
床は乱形の天然石。いわゆるフラッグストーン系の仕上げです。
乱形って、うまくやると“自然に見える”。でも、下手にやると“乱雑に見える”。
ここは、意図して綺麗にしすぎない。
でも、だらしなくはしない。
森の庭で「床が主役」になると、空間が硬くなるんです。
床はあくまで受け皿。主役は光と緑。だから床は控えめに、でも品よく。
写真の左側、芝の小道がくねっと奥に伸びていますよね。
あれはわざとです。まっすぐ行けるのに、少し曲げている。
人って、まっすぐだと景色を“消費”して終わるんです。
曲がってると、次が見たくなる。ほんの少しだけ、期待が生まれる。
その先に階段をつくって、視線が上へ抜ける。
上段のところに小さな屋根(パーゴラ的なポイント)が見えるのも、あれが「目的地」の役割をしてます。
庭は「どこに向かって歩くか」があると、生きます。
目的地がない庭は、歩く理由がない。
森の庭って、日陰寄りになります。
日陰で無理に花を咲かせようとすると、弱るか、伸びて倒れるか、病気が出ます。
だからこの庭は、花よりも葉を大事にしています。
写真手前の大きな丸い株。
あれ、いいでしょう。堂々としてて、落ち着く。
ホスタ(ギボウシ)みたいな大きい葉は、それだけで庭の“安心感”をつくってくれます。
雑草も入りづらいし、管理も実はラクです。
そこに、紫の花を散らす。
紫って、森の緑に負けないんですよ。派手じゃないのに、ちゃんと効く。
しかも暑苦しくならない。涼しい顔をしてくれる。
赤い葉のアクセントも入れてます。
あれは「やりすぎると下品」「入れないと単調」になる難しい役。
一点だけ、ピンを刺す感覚で入れてます。
森の庭で一番怖いのは、水が溜まること。
湿気が抜けないと、苔は出るし、根は傷むし、石も汚れやすい。
テラスは見た目がフラットでも、ちゃんと水が逃げる勾配をつけています。
ほんのわずか。でも、それがあるかないかで、数年後の綺麗さが変わる。
石積みの裏も同じ。
水が抜ける層をつくって、逃げ道をつくる。ここをケチると、見た目が良くても崩れます。
庭は、完成直後より、3年後に差が出ます。
その差はだいたい「水」と「下地」です。
植えたばかりの庭は、正直まだ隙間がある。
でも、私はその隙間が嫌いじゃないです。
宿根草が太って、葉が重なって、道の脇がふくらんでくる。
石の角が少し丸く見えてくる。
落ち葉が季節を教えて、春にまた芽が出る。
庭って、人の生活の横で、勝手に育っていく。
でも、その「勝手さ」が暴れないように、最初に骨格だけきっちり作っておく。
この庭は、その考え方で組み立てています。
最後に、維持管理のコツを置いておきます。
庭は“続く”のが一番えらい。無理しないのが正解です。
混み合った枝を間引いて風を通す。
森の庭は湿気がこもると一気に崩れます。風が通れば、だいぶ楽になります。
「大きくなりすぎたらどうしよう」じゃなくて、
大きくなったら株分けすればいい。春か秋に分けると、また元気になります。
私は、庭を写真のために作っていません。
座った時に肩が落ちるか。
風の音がちゃんと聞こえるか。
帰ってきたくなるか。
この庭は、そういうところを狙って作りました。
もし、あなたの庭でも
「こんな雰囲気にしたい」「ここを座れる場所にしたい」
みたいな相談があれば、写真1枚でも十分ヒントが出せます。
長井が、現場目線で一緒に考えます。
ぜひ、お問合せフォームよりご相談ください。